Back to Index

ペダルをこぐたび、景色と意識が変わる。自転車通勤80kmで感じたこと

辻 元気
こんにちは、栃木県にあるデザイン制作会社・株式会社アールイーデザインでクリエイターをやっている辻元気(ツジゲンキ)です。
この4日間80km、自転車通勤を始めました。
片道10km、ゆっくり走っておよそ45分。最初は健康のためにと始めたものでしたが、たった4日でも“見える世界”がガラリと変わったことに驚いています。
通勤手段を「クルマから自転車」に変えただけで、景色や人との関わり方、そして地域に潜む課題まで、まるで別の視点で暮らしを見つめ直せるようになりました。

見えなかった「日常」が、そこにあった

車では何気なく通り過ぎていた道。スピードを落とし、自転車でゆっくり進んでみると、今まで見過ごしていた風景がたくさん目に飛び込んできます。

例えば、朝の通学時間。横断歩道に立つ地域の見守りの方々と自然と交わす「おはようございます」の挨拶。
また、季節の移ろいを感じさせる道端の草花や、田んぼに広がる朝霧の風景。
こうした“小さな日常”に、思いがけず心が和みました。

暮らしのなかに潜む“危なさ”に気づく

自転車だからこそ見えてくる、通勤路の「危ないな」と感じるポイント。

  • 草が伸び放題で狭くなった道
  • 舗装の悪い段差や急な傾斜
  • やむを得ず逆走している自転車の多さ
  • 横断歩道で止まらない車の多さ

自転車もまた「車両」であるという意識

自転車で通勤していると、「自分は車両の一部なんだ」という意識が自然と芽生えます。
速度も立場も車と歩行者の間ですが、ルールは明確に存在しています。

そんな中、栃木県警察交通部交通企画課が発信している「自転車安全利用五則」は、交通社会の一員としての自覚を再確認させてくれる重要なガイドラインです。

自転車安全利用五則(栃木県警より)

  1. 車道が原則、左側を通行。歩道は例外、歩行者優先。
  2. 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認。
  3. 夜間はライトを点灯。
  4. 飲酒運転は禁止。
  5. ヘルメットを着用。

※5のヘルメット着用は道路交通法で努力義務となっていますが、自分の身を守るという点では着用した方がいいですよね。
私自身も、この五則を守りながら、自転車通勤をたま〜にしていきたいと思います。
栃木県警察ウェブサイトより引用

「万が一」に備える責任としての保険加入(栃木県の場合は義務です)

また、自転車利用における“責任”として、忘れてはならないのが損害賠償責任保険の存在です。

栃木県では令和4年7月1日から、「栃木県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」により、
自転車を利用するすべての人に対して、「自転車損害賠償責任保険等」への加入が義務化されています。
(※未成年者の場合は、その保護者が保険加入義務を負います。)

この保険は、自転車による事故で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりした場合に、加害者としての損害賠償をカバーするもの。実際に全国では、数千万円の賠償命令が出された事例もあり、「自転車も加害者になりうる」という意識を持つことが大切です。

当然の義務として私も「個人賠償責任保険」に加入した上で、自転車通勤しています。
既に自動車保険などに加入している人は月数百円プラスすれば加入可能です。
見落としがちな部分ですが、通勤や日常利用をする人ほど、保険の見直しはしておくべきだと感じました。

『推進計画』と現実のギャップ

実は日本では、平成30年6月に閣議決定された「自転車活用推進計画」、そして令和3年5月に「第2次自転車活用推進計画」にもとづき、国として自転車活用・利用の拡大を正式に推し進めています。

自転車活用推進計画とは

  • 健康増進、環境負荷の軽減、地域活性化、災害時の移動手段確保などを目的に策定
  • 企業や自治体が積極的に自転車通勤を導入できるよう、「自転車通勤導入に関する手引き」も整備
  • 官民連携で「安全・快適・便利」な自転車利用のインフラ整備を目指す

しかし、現場を走ってみて感じるのは、計画と現実のギャップです。
特に地方では、インフラの整備状況が追いついていないのが現状です。

例えば——

  • 道路脇に小石や砂利が散乱していて、タイヤが滑る、パンクする危険がある
  • 除草されておらず、草で自転車が通れない狭い路肩
  • 段差やひび割れが激しい舗装路
  • 「自転車通行可」の標識があったかと思えば、突然歩道が途切れる構造
  • 自転車ナビラインなどの視認性の悪さや未整備

こうした現実は、「自転車通勤をもっと活用しましょう」という国の呼びかけと大きく矛盾しています。
地方にこそ、マイカー依存から脱却できる可能性があり、自転車通勤はその一助になり得る——
にもかかわらず、「走りにくい・危ない・不便」では、誰も踏み出すことができませんよね。

行政の整備をただ待つだけでなく、利用者として声をあげ、フィードバックを届けることも必要だと感じています。
実際に走る人間の実感をもとにした改善提案が、これからの交通インフラづくりには欠かせないと感じました。

暮らしの“足元”に目を向けてみると

辻 元気
自転車通勤を始めたたった4日間80km、私の中にいろんな発見と問いが生まれました。
自然の美しさ、人とのつながり、地域のインフラの課題、そして自分自身の交通マナーの在り方。

これらは、どれも「暮らしの足元」にあるものばかり。
今まで当たり前に使っていた道や時間が、こんなにも多くのことを教えてくれるとは思いませんでした。

“見えていなかったもの”が見えてくる感覚を、もっと多くの人と共有できたら。
そんな思いで、この体験をまとめました。

クルマから自転車へ——。
ちょっとした変化が、私の暮らしと視点を豊かにしてくれました。

追伸:夏の自転車はつらいぞ〜。

Contact us

ホームページやインターネット広告などに関するご相談、
ご質問などお気軽にお問い合わせください。
お見積りやご相談はすべて無料で承ります。

Tel:0287-69-6283(9:00-18:00 土日祝祭日を除く)